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「俺、すげーブラコンなんです。周りにもバレちゃうくらい、玲央にも知ってるって言われるくらい、すげーブラコンなんです。
だけど玲央を許して一緒に生活していく理由を、それで済ませたくはないんです。
確かに最低な兄貴だけど、そんな玲央の横を堂々と歩けるくらいには俺、したたかになりたいな」

「……ことら、くん」


力の入らない笑みを浮かべると、なぜか其川さんは泣きそうな顔をしていたけれど、はっきりと頷いてくれた。


「……みんな、玲央のことをよろしくって俺に言うんですよ」

「……」

「俺だって苦しいし、泣きたいし、そう言ってくれる人、欲しいなってたまに思う。
卑しいけど、俺のほうが悲惨だったんだって大声で怒鳴りつけたくもなる。
でも、できないんです。それをしたら多分、俺も間違えちゃうと思うから」

「……」

「玲央はそれでもいいって言うんですけど、でもダメなんです。
それをしたら俺、もう弟じゃなくなる。ただの被害者になる」

「小虎くん、それは……っ」


俺だって人間だから、そりゃ当然傷つく。男のくせに泣き虫だから、幼児退行する様に後先考えず泣き喚く。
でも、それは俺が玲央の弟である最後の一線であるような気がしてならないのだ。

俺は被害者です、可哀想なんです、だから同情してください。なんて、どんなに苦しくても口にするのはごめんだ。そのプライドこそが、きっと朝日向玲央の弟である朝日向小虎の最後の意地だ。


「俺、なんにもできないくせに、泣き虫で、弱くて、ちょっと流されやすいとこもあるし、人より理解するのも遅いけど、でもそんな俺にだって譲れないもんはある。
……自分が思っている以上に、どうやら頑固者みたいです、俺」

「……ことら、くん……っ」


多分、その決断はいつか絶対に俺を苦しめるはずだ。いや、もう何度か苦しんでいたけれど、それでも、もういい加減自分を追い込むのは止めにしよう。


「だから其川さん、俺、強くなるよ。うんと強くなる。そしたらいつか、俺たち兄弟とご飯でも食べに行きましょう……あ! いや、ご迷惑でなければ、なんですけど」

「……ふふっ、最後まで格好のつかないところが、小虎くんらしいなぁ。……うん、その日を楽しみにしてるよ――朝日向さん」

「……! ……はい、先生……!」


いつか訪れるその日に思いを馳せながら、俺は其川さんと微笑みあったのだった。




 


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