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*玲央side**


巴に謝罪させ、仁に頭を下げて小虎と別れたあと、俺はいつものようにデスリカに訪れた。
ただ、いつもと違って向かう先は二階ではなく、司が陣取っているオーナールームだ。
ノックもせずに扉を開けると、監視カメラで様子を見て知っていた司が缶ビールを手に笑顔を浮かべている。気持ちが悪い。


「よぉ、ブラコンおにーちゃん♪」

「……」


本気で殴りてぇ、コイツ。
投げられた缶ビールを掴み、促されたソファーに腰を下ろすと目の前に茶封筒が置かれた。


「お前のだぁ〜いすきな小虎くんの情報。タダでもいいけど、どーする?」

「いらねぇ」

「診療録も入ってるけど本当にいいのかな〜?」

「司」


意地の悪い笑みで落とし掛けるこいつの手際にはいつも感嘆させられるが、目の前の餌はただの紙切れにしか見えなかった。
缶ビールを開けず、真っ直ぐ司を見る俺の瞳に一瞬たじろぐものの、司はため息をつき、汚物を見るような目を返す。


「俺に利用価値があるならいくらでも客寄せはしてやる。けど、ブラックマリア総長の座は降りる」

「……ちっ、釣られとけよ、てめぇ」

「悪いな」


くすりと微笑み缶ビールを茶封筒の隣に置いた。それを見た司が露骨に顔をしかめるが、不思議と焦りはなかった。


「……俺、意地悪だからバラしちゃうかもー」

「お前がそんなことするタマかよ」

「はぁ〜? 俺の一体なぁーにを知ってるって言うのかな〜? 玲・央・はー」

「さぁな、けど知ってることもある」

「あぁ? んだよ」


年上とは思えないふて腐れた姿を見せる司はギロリと睨んできた。つい可笑しくて笑うと、今度は目が丸くなっている。


「弟の為に馬鹿やる司のことなら、知ってる」

「……」


ついに呆気に取られた司に触れず煙草を取り出す。煙を吐き出したと同時に意識の戻った司が口を開閉させながら俺を指さした。




 


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