あの後、なぜか雄樹は可愛い可愛いを連発し、俺の質問に答えることなくノロケていた。
いやまぁ、ノロケ内容から多少分かったような気もするが、聞く相手を間違えた感は否めない。
かと言って、もう一人の友人、志狼にこんなことを電話して聞くのも気が引ける。
釈然としない俺を気使ってか、雄樹は閉店後、帰ろうとする俺をとっ捕まえて酒盛りを開いたのであった。
雄樹と仁さんと三人で飲む酒はやはり喉をよく通り、同じように酔いが回った雄樹が仁さんにくっつくのを見て、こっちまで恥ずかしくなったほどだ。
「じんしゃーん」
「……おいこら、飲み過ぎだテメー」
「えへへへへ」
と、こんな調子なのだから本当に照れるわけで。
一人酔えずにいる仁さんは俺がいることで焦ってはいたが、その顔はやはり嬉しそうに見える。
別に羨ましいとか、思ってはいない。
あぁやって酒の勢いにまかせて抱き着くのも、きっと甘え方なんだと思う。
玲央にくっつくのは好きだ。ちょっと密着し過ぎかなって思うけど、でも好きなもんは好きだ。
「あ? もう閉店してんのか?」
「巴……」
デスリカとは違い早い時間に閉店するカシストに、ふらりと現れたのは巴さんだった。
仁さんは嫌そうな顔をしていたが、それは巴さんに対してではなく恥ずかしさからだろう。
巴さんは俺の隣に腰を下ろすと、勝手にグラスに酒を注いでいた。
「酒盛りか? いいねぇ、俺も一杯ひっかけていくかな」
「おい巴」
「安心しろよ、仁の女にゃ手ぇ出さねぇし、小虎にだって多分出さねぇよ」
「お前な……あんまり玲央をからかうのは止めろ。この二年で変わったのはてめぇだけじゃねぇんだぞ」
「ははは。仁は相変わらず優しいねぇ」
暢気に話を進める二人を見ながら、ちびちび酒を飲む。
なんというか、巴さんは危険な感じもするけど不思議な人だと思う。
どんな場所にもするりと入り込んでくるというか、やっぱヘビみたい。
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