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なんとも悲惨なことに、俺の日常には玲央という存在が大きく組み込まれてしまったらしい。
人はそれをブラコンというのかも知れんが、昔から結構ブラコンだったので納得してもやる。

玲央の香り、玲央の体温、無遠慮な撫でまわし、時折見せる優しい表情、昔じゃ考えられない言葉の数々。
おかえりもただいまも、おはようもおやすみも、言えるのは俺だけなんだって思っていたのは多分、優越感。

素直にどうして欲しいか言わずとも、俺は無意識に玲央に甘えていたんだって、分かってしまう虚しさ。


「……なぁ、ゆーきぃー」

「んー?」


あれからお弁当を作る気力もなく、昼は販売用のお粥を食べた。
午後の鐘が鳴っても調理室でぐうたらしている親友、雄樹に声をかける。


「お前ってさぁ、仁さんにどんな風に甘えんの?」

「はい!?」


しかし俺の質問を聞くなり飛び起きて、顔を赤くしながら冷や汗を流していた。
茫然とした表情のままそんな雄樹を見つめ、また口を開く。


「どーやって甘えんの?」

「あの、と、トラさん? 一体どうしちゃったの? ですか?」

「トラさん言うな。つか語彙が変だぞお前」

「だってトラちゃんが変なこと言うからじゃーん!」


変。まぁ、そうだよなぁ。
俺だっていきなり「どうやって甘えんの?」とか聞かれたビビるわ、うん。


「……や、俺さ、甘え方っての? よく分かんなくて」

「……うん?」

「だから、なんつーか、その、あれだ、アレ」

「あれ?」


首を傾げる雄樹とは逆に、今度は俺の頬が真っ赤に染まる。


「こ、恋人いる雄樹なら、あま、えかたとか、分かるかなって、思ったんだけ、ど……」

「…………」


かぁああ。男二人、向かい合わせで顔が真っ赤。なんだこの状態。
むずむずして頭を掻くと、急に雄樹が抱き着いて来た。


「トラちゃん! 可愛い!」

「……」


雄樹さん? 俺の話聞いてました?




 


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