「……」
「すっげー寝癖」
くしゃり。開口一番そう発し、いつものように俺の頭を撫でる玲央。そのまま背を向けソファーへ歩き出す背中を見つめながら、俺はよく分からない息を吐いた。
そうしてシーツやらを洗濯機にかけ、そのあいだに風呂へ。上がった頃には玲央が料理を温めており、その姿にまた息を吐く。……なんだかなぁ。
「……いただき、ます」
「いただきます」
シーンと静まり返る部屋の中、食器の音がいやに響く。玲央は黙々と食べていたけれど、俺はしょっぱいはずの料理の味がよく分からず、ひたすら皿を見つめていた。
食べ終わり、せめてもと食器を洗う俺のうしろからは、玲央が見ているだろうテレビの音が聞こえている。洗い終わり脱衣所へ行くとシーツやらの乾燥はすでに終わっていた。
ふたたび両手に抱え込み、部屋に戻ってセットする。うん、柔軟剤の良い匂い。だからといって、その匂いにつられて眠るほどの眠気はない。
開け放した扉からリビングを覗くと、冷蔵庫からビールを取り出す玲央の姿を見つけた。
くるりと体を反転し、部屋の壁に背をつける。はぁ〜、と深いため息がこぼれたのは一体どんな気持ちからだったのか。
……玲央が昨日のことに触れないのは、多分俺に気を使ってくれているんだと思う。
そういった経験がない俺が下手に気にし過ぎて、余計な溝ができないようにあえて触れないんだと思う。
それは分かる。分かるんだけど、なんつーか、そういうことじゃなくて。でも謝って欲しいとか、そういうことでもなくて。
なんつーか……。
「……れおの、ばぁーか」
「誰が馬鹿だって?」
「!?」
すぐ真横から聞こえた声に体がビクーンと跳ねた。
ギギギ、なんて壊れたロボットのように首を動かすと、そこには細目でこちらを見ながらビールを飲む玲央様が。なんでここに!?
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