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かと思えば顔を上げ、色の孕んだその瞳で俺を見つめてきた。


「……あっ……」


ずんっと下半身が重くなり、顔が真っ赤に染まる。獣の瞳を見つめる俺の体はどうにかなってしまったのか、はたまた雰囲気に呑まれたのか、体中に甘い痺れが走った。
そんな俺を見つめる獣はゆっくり近づいてきたかと思うと、ぺろり、と味わうように俺の唇を舐める。ゾッとして顔を背けた瞬間、顎を掴まれ強引に前を向かされた。


「んっ!? ん、んー!」


そしてなにを思ったのか、俺の唇に食いついたのである。
頭の隅ではこうなるのではないかと予想していた。けれどもこの行為は、これは、ダメだと俺でも分かる。
だって……あのときとは違う。デスリカでのあのキスと、これは違うから。


「ん、れ……ひゃ、んぁっ!?」


抗議の声を上げようと口を開く。できた隙間を狙っていたかのように、獣は唾液に塗れたそれを押しこんできやがった。その熱さにまた脳が痺れていく。わざとらしく音を立てて俺の唾液を吸う獣の手が、いつのまにか俺の腰を抱いていた。


「はっ、んむ……れ、れりょ……っ、や、め」

「ん……っ、はぁ……甘ぇ……」


甘い? 獣の言葉を認識した瞬間、口に広がる味を脳が感知してしまう。腰が緩く疼く。
甘い、だって甘い。少し辛めのお酒と、煙草の苦みが、でも甘くて、もっと、ダメなのに、でも欲しい。あぁ、正常な思考が働かない。
それでも僅かに残る自制心で獣の髪をわし掴んだ――それがまるでおねだりのようだとは、知らずに。


「ふ、はぁ……んっ、んう」


熱を孕んだ舌が歯列を、舌の裏を、頬を、上顎をまんべんなく舐めまわす。かと思えば舌の表面をねっとりと重ねてくる。抵抗を見せれば舌を絡めて唾液ごと吸われた。口の端からは二人分の唾液がこぼれるが、獣はそれさえ惜しいと舐めとってくる。

食われている、と思う。鋭い瞳で体の自由を奪い、己の手で柔らかく仕上げた獲物を食っているのだ。

開いた唇に獣の吐息が吹き込まれた。もう一度伸びてくるその舌を、今度こそ俺が噛んでやる。
一瞬怯んだものの、甘い息を漏らした獣は俺の唇を何度か甘噛みし、最後にもう一度舌を食むと満足げに自分の上唇を舐めながら離れた。


「消毒」


そして意味の分からない理由を告げ、喉を鳴らしながら先に戻っていったのであった。




 


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