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「ならてめぇ一人で帰りな。帰ってきた先輩にろくな挨拶もできねぇ奴、いるだけで酒がまずくなる。消えろ」

「……あぁ゛?」


俺の手を取ったのは、真髄な表情で玲央を睨む巴さんだった。彼の言葉を聞いた玲央は眉間にしわを寄せ、俺を握る手に力が増す。痛さに顔をしかめた瞬間、ふたたびエレベーターが開いた。


「おいおいなんだ〜? 空気悪いじゃねぇかよ。せっかく持ってきた酒やらねーぞー?」


そこから現れたのは、あの変態カメラマン――西という男。そして苦笑を浮かべる隆二さんだったのである。
ずかずかとこちらへやって来た西さんは、手に持っていた酒をテーブルに置くなり俺たちの状況を見て、なにを思ったのか俺の顎を掴み、じっと凝視してきた。


「ふーん、元の顔のほうがいいじゃねーの、お前」

「……はぁ、どうも」


ニヤニヤ笑う西さんに一応礼を告げる俺の状況を、誰かどうにかしてくれ。両方の腕を引っ張られて顎を掴まれるとか、なんなんだこれ。


「っと、それよりホラ、訳わかんねー二人は手ぇ離してやれ。酒飲むぞ、酒」


パンパン。手を叩いた西さんが玲央と巴さんの手を引きはがす。思わずホッとする俺に玲央から舌打ちが飛んで来たが、あえて聞こえなかった振りをしておこう。……あとが怖いけれど。


「あ、そういや玲央、前の写真でちょっと仕事の話あったんだわ。おいお前ら、酒残しといてくれよー?」


席に座った西さんは煙草を咥えるとそう告げて、玲央を引き連れ奥のテーブルへ。
俺は元の位置に座り直し、ため息をついた。


「小虎ー、俺の隣あいちまった。ほら、来いよ」


そんな俺に空気の読めない、いや読む気のない巴さんが玲央のいた場所をポンポンと手で叩く。仁さんからもため息が漏れだす状況に、俺はちょっと強引にそこへ腰を下ろした。




 


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