一体どんな過去があったのか気にならないと言ったら嘘にはなるが、聞いたら最後だと警告する自分がいるのも確かだ。
居心地の悪い思いをしている俺と雄樹に気づいた司さんが、にっこりと微笑む。い、嫌な予感。
「こいつ、当時のチームの馬鹿がシャブで捕まったときに見せしめとしてパクられたんだよ。ダサイだろー?」
「おい司ぁ、俺ぁ体張ったんだぞ? もっと巧く話してやれや」
「あぁ? やってねぇくせに自分が指示したの一点張りのテメーをムショから出すのに、俺がどれだけ苦労したか分かってんのか?」
「ははは! そりゃ悪かった!」
予想外の真実にポカンと口が開く。確かに豪快な性格ではあるが、誰かの代わりに罪をかぶったと言うのか?
驚く俺の横で質問を口にしようとした雄樹を、ふたたび仁さんが手で塞いだ。それを見る司さんと巴さんは相も変わらず悪い顔で微笑んでいる。
「やだねぇー、男の独占欲は醜いぜー、じーん?」
「そうそう。俺だってさすがに仁の女にゃあ手ぇ出さねぇって」
女呼ばわりされた雄樹がモガモガ騒いでいるが、仁さんの目は鋭く二人を見据えている。その目がどれだけ雄樹を大切に思っているか、俺にだって十分伝わってくる。なんだか羨ましいなぁと思う自分にハタと気がつき、咳払いをして酒を飲んだ。
「けどまぁ、玲央と小虎には手ぇ出しちまうかもなぁ?」
飲んでいた酒を軽く噴き出す。ゴホゴホと咳き込む俺の背中を、雄樹が慌てながら擦ってくれた。あぁ、癒しだ。
突然、笑う巴さんに舌打ちをこぼした玲央は、そんな俺の手を取って出入口へ向かおうとする。急に引かれた体がバランスを崩し、思わず手の中にあるグラスを落としそうになった。阻止するために取られた腕を引くと、玲央の歩みが止まる。
それが気に食わなかったのか、玲央はじとりと俺を睨んでくるが、負けじと口を開いた。
「急に引っ張られたら落とすだろ」
「……帰るぞ」
「え? あ、でも」
「聞こえなかったか、帰るぞ」
強引な玲央に思わず口を閉じると、グラスを持っていた手が引かれた。
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