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それから仁さんは雄樹になにかを告げ、仕事へと戻らせた。
なんだか雄樹の身を案じたような雰囲気に、嬉しさと少しの寂しさを覚える。いやいや、なんでだ。


「しっかしこの街も変わっちまったなぁ」

「……てめぇがいた頃よりはマシだ」

「おいおい、さすがに傷つくぜ? つーか慰めの一つ言ったって損はねぇだろ? な、小虎」

「うぇ!? え、はぁ、どうなんでしょう?」


なぜに俺に振る!? 驚きつつ返事をする俺を見つめたかと思うと、やはり巴さんとやらは豪快に笑った。


「いやぁ〜、こんだけ似てねぇ兄弟もそうそういねぇわ! お前、本当に玲央の弟かよ」

「え? 玲央のこと知ってるんですか?」

「知ってるもなにも、玲央に喧嘩で勝てる男の一人だぜ? 俺はよ」

「……はい!?」


あの玲央に? 喧嘩で勝てる? いやいやいや。え? マジ?
ん? ということはもしかしてこの人……。


「二代目、総長……ですか?」

「お、正解〜。褒美にこれやるよ」


なんともあっけらかんな返事である。しかも褒美と言って手渡されたものはコンドームだった。なんで!?


「男の必需品だろ? 俺のおすすめだ」

「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます」


そう言って返そうとする俺の手を、巴さんとやらが握りしめる。


「人から貰ったもんを返すんじゃねぇよ。相手に失礼だろ? なぁ、小虎?」

「……っ」


久しぶりに体の奥がゾッと冷えた。表情は確かに笑顔なのだけど、鋭く微笑むその目に逆らえない。見た目は肉食獣のそれだが、足元から恐怖を植え付ける様はなんだか蛇のようで……恐ろしい。


「――っと、驚かせたか。悪い悪い」

「……いえ」


恐怖で身を固める俺に気づいた巴さんは、またも人当りの良い笑顔を浮かべ、俺の手を離した。
そんな様子を見ていた仁さんは大きなため息をこぼし、俺の頭をぐしゃりと撫でる。


「騙されんなよ、トラ。こいつが玲央に勝ったのは一度だけだ」

「おい仁、さっそくバラすなよ、つまんねぇ」


それでも一度は玲央に勝ったという事実に、俺は男を意識しながらお粥作りを再開した。




 


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