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とは言え、久しぶりのお出かけに俺が喜ばないはずもなく、早く土曜日が来ないかなぁとソワソワする様は傍から見ると不審者だろう。いや、いい。今ならなにを言われたって笑顔で流せる自信がある。それよりお弁当なに詰めようかな? おにぎり……は、食べなさそうか?

――と、浮かれている俺の元に、嵐は突然やって来た。


「おー、てめーが小虎か。ちっちぇーなぁオイ。飯食ってんのか?」

「……はい?」


金曜日の夜、カシストにていつものようにお粥を捌く俺の前に現れたのは、サイドを刈り上げた、ちょっとオールバックぽい厳ついお兄さんだった。チャームポイントは眉ピだな、うん。
そんなアホなことを考える俺の横で、グラスを磨いていた仁さんのほうからガシャーンと不吉な音が。ちらりと見れば、床の上でグラスがバラバラになっている。


「……巴(ともえ)?」

「おう、仁。久しぶり」

「は? お前いつ、」

「昨日だよ。その足で戻ってきた。つーかそれより腹減ってんだよ、俺」


驚く仁さんを余所に、俺の目の前にドカッと腰を下ろす男――巴さんとやらはニコリと笑う。


「だからお粥寄こせ、小虎」

「……」


え、えーと。とりあえず突っ込めばいいのか? そうなのか? いや、止めておこう。
仁さんの態度に驚いた雄樹が小走りでやって来た。それを横目にもう一度、目の前の男を見据える。


「梅と卵味噌、あと中華粥、どれにします?」

「卵味噌」


相変わらずニコニコ微笑む巴さんとやらは、落ち着かない様子の俺が準備する様をじっと見つめてくる。
その視線をあえて無視してお粥作りをはじめると、どうやら雄樹の手により正気に戻ったらしい仁さんが、彼の前にビール瓶を置いた。


「なんだ、ビールか。日本酒ねぇのかよ?」

「生憎とてめぇみたいな酒飲みにくれてやる日本酒はねぇよ。大人しく飲んでな」


そう言って、やはり仁さんにしては珍しい遠慮のない手つきでコップを渡すと、巴さんとやらは豪快に笑った。




 


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