俺は悪くない。自分にそう言い聞かせ、カラメルを絡ませてプリンをすくう。
「ん、あーん」
「…………」
差し出した俺に玲央が固まった。と思いきや、ゆっくりこちらに近づきパクリと一口。……本当に食いやがった。明日は槍決定だな、こりゃ。
「甘ぇ」
しかしプリンの甘さに顔をしかめた玲央は、手に持っていたビールを一気にあおぐ。なら何故食べたと突っ込みたいが、それは止めておこう。
さてテレビを見るかと降りようとした俺を、またも玲央が止めてきた。
「……玲央?」
「……」
「どーしたの、具合悪い?」
「……」
「れーお」
「遊園地」
「へ?」
幻聴か? 今、玲央の口からありえない単語が聞こえてこなかったか?
腰をがっちりと抑えられ、満足に振り向くこともできずにいる俺のうなじに、なにかが触れた。多分、玲央の額だと思うのだが。
「遊園地、前に行きてぇって言ってただろ? 行くか」
「はぁ?」
おいおい玲央さん、本当にどうしたんですか。
悩みすぎてついに現実逃避でもしたのか? いや、玲央に限ってそれはないか。
でも……酒でも女でも喧嘩でも晴らせない悩みなら、相当なのかもしれない。
かといって、ここで玲央に付き合うのもなんだか違う気がする。
「……嬉しいけど、どうしたのさ」
「あ?」
素直に頷かない俺に、若干怒りを含んだ声が突き刺さる。俺を捕える玲央の手に、さらに力が加わった。
下手に返事をするわけにもいかず、どうしようかと黙っていると玲央がため息をつき、俺の肩に顎を乗せてきた。
「……俺や泉、匡子のことで迷惑かけたろ」
「……へ?」
「だから攫われたりとか、話し相手になったりとか、しまいにゃ女装までしただろテメー。だからその礼になんかしてやろうと思ったんだよ、悪いか」
「……は? え、あ、いや。全然、全然悪くないです、はい」
……おい待ってくれ。もしかして最近玲央が悩んでた理由って……まさかこれ?
玲央にしては珍しい直球な言葉を言えず、ずっと悩んでたとか?
いやいやいや、ないだろ、ないない。
でもやべぇ、顔がニヤけるんだが。
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