それからいつものようにお粥を捌き、閉店後は三人で試食会(結局あの不良たちは来なかった)。
どれも確かに美味しいのだけど、仁さんが用意しようとしている長皿に乗るおかずの数は三つ。結局話はまとまらず、とりあえず今日はお開きに。
帰り道、なんだか甘いものが食べたくなってコンビニでプリンを買った。一応、玲央の分も。
玲央がプリンを食べる姿を想像してつい笑ってしまうが、秋も近くなった外の空気は寒く、俺は小走りで家へと向かった。
「うおっ!?」
家に帰るとやはり部屋は真っ暗で、先ほどのプリンを先に食べてしまおうか悩みながら電気をつけた。ら、ソファーに玲央が座っていた。電気くらいつけろよな……。
不審に思いながら近づくと、玲央の服は真っ赤に染まっている。当然、みな返り血である。
――最近の玲央は様子がおかしい。
夏休みが明けてから以前のように帰りが遅くなった。デスリカにお粥のデリバリーをする時も、酒を浴びるように飲んでいるか、可愛い女の子の腰を抱いてヤリ部屋だとかに入るところばかりで、こうして家に帰ってくると、その姿にはなにかしら喧嘩の跡が残っている。
とはいえその目に俺を拒絶する色はなく、昔のように殴られることはないと感じているが……その目を見るのは、なんだか怖いとも思う。
「玲央、ただいま」
とはいえそんな玲央になにかできることもなく、普段通りに接している俺は弟として失格なんだろうな。
きっと……玲央には悩みがあるのだと思う。それを打ち明けてもらえない寂しさと、自分の不甲斐なさが申し訳ない。
どこか遠くを見つめていた玲央は目線だけをこちらに向け、「おかえり」と呟く。
俺は買ってきたプリンを袋から取り出し、ニコッと微笑んだ。
「プリン買ってきた。あとで食べよ?」
「……飯」
「え?」
「腹減った、飯」
一瞬思考がついていけずに固まる。今、なんて言った? 飯?
「でも玲央、俺が作っても」
「飯」
けして睨んでいるわけではないが、あまりの気迫に俺は頷くのであった。
← →
しおりを挟む /
戻る