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「夏休み、あっというまだったねぇ」

「……お前、まだそれ言うか」


麗らかな昼下がり、夏休みを終えて早二週間になるというのに、つい三日前まで髪の色が赤だった雄樹(今はお気に入りのオレンジ)の言葉に俺はため息をついた。


「全然休みが足りなーい。てか学校だるーい」

「結局それが全部なんだろ」

「ぶーぶー! トラちゃんの薄情者―!」

「はいはい」


アホの言葉を聞き流し、準備を終えたお粥を眺めて首を回すと、コキッなんて関節の音がした。歳に合わず絶対凝ってるだろ、俺。
そんな俺の態度が気に食わないのか、雄樹はやはりアホなことを言いながら散々駄々を捏ねていたが、お粥目当てにやって来た不良に標的を変え、理不尽な悪戯を仕掛けている。あぁ不良たち、可哀想に。


「トラ、塩昆布」

「ん? はいはーい」


雄樹の魔の手から逃れた数人の不良たちが煙草を咥えながらこちらへ寄ってきた。
各自勝手に決めた場所でもあるのか、座りながら注文を伝えるその姿は自由である。

名前も知らない不良が以前、自分で持ってきた塩昆布を俺に預けて以来、そいつは一々俺に命令してお粥を催促するようになった。他にも食べるラー油やらシラスやら果てにはふりかけまで、不良たちはおかずを持ち込んでは俺に押し付けてくる。
最初はどれが誰の持ち物か分からなかったが、そんな俺に不良たちは親切に教えてくれた。

玲央が兄貴だと知ったときは距離を取っていたというのに、なんともまぁ不思議な話である。


「あーあ、トラの可愛げが彼女にもあったらなー」

「あははっ! 玲央さん聞いたら怒んぞテメー」

「だってよー、物取らせようとすんと自分でやれとか言うんだぜ?」

「そりゃお前、相手が悪いんだって」


ただのお粥と一緒に塩昆布を置く俺を見て、不良たちはまたも自由なことを口にする。
玲央が怒る云々はないと思うが、彼女さんと俺を比べるな。失礼だろ、両方に。




 


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