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おぼつかない足取りで俺の前までやってきた内山は、ひどく顔を歪ませながら俺を見つめる。


「ごめ、俺、トラちゃんこういうの苦手って知って、のに、ごめ、ごめん」

「なに謝ってんだよ。確かに驚いたけど、お前不良じゃん、あんな一面だってあるだろ」


ははっ。笑ってそう言ってやると、なぜか内山は俺に抱き着いてきた。


「トラちゃん、友達やめないで、ね、お願い」

「あ? さっきからお前なにひ弱になってんの」

「だって、だってトラちゃん怖いって、思ったでしょ?」

「や、怖いっていうか、びっくりしただけだし。つーか俺のセリフだろ、友達やめないでって」


自慢じゃないけどな、俺の友達はお前だけだぞ内山。

自分でも悲しいことを思いながら内山を見ると、背丈が同じくらいのやつの顔は思いのほか顔面近くにあった。


「なんで?」

「なんでって……俺の友達、お前だけじゃん……雄樹」

「!」


照れくさくて、なんだかずっと呼べなかった名前を呼んでみた。
すると内山は……雄樹は目を丸くして俺を見つめる。その顔がなんだかアホっぽくて、俺はつい笑ってしまう。


「? トラちゃん?」

「や、お前ってさ、全身からアホでーす、って放出させてるよな」

「え? ……なにそれー……?」

「悪い。けど俺、お前のそういうアホなとこに救われてる。アホでいろよな」

「……なんか腑に落ちないけど、アホなままでいます、俺」

「おー、そうしてくれ」


あ、やっぱりアホだ。こいつアホだ。
だから、俺はこいつと一緒にいるだけで楽になるんだろう。

それから落ち着いた雄樹が普段通りに戻り、先ほどまでのひ弱な部分はどうしたのかとこちらが聞きたくなるような態度で煙草を吸い出した。
俺はといえば、中断していた洗い物をしているというのに。手伝えよお前。




 


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