それから黙々と食べ続けた不良たちを見守り、帰り際に内山が千五百円受け取っているの見て驚き、調理部一日目の幕は閉じた。
初日から人が来たのは驚きだが、それはやはり内山が脅したからであって、明日からは来ないだろう。そう思っていたのだが、やはり内山パワーは尋常じゃあなかった。
次の日、違う不良たちがこぞってやって来たのである。その数、ざっと十数人。
内山に問いただすと、「俺は昨日のメールしかしてないもーん」なんてのたまったが、絶対この不良たちも脅されたに違いない。
俺とたいして背格好変わらないくせに、ちょっと腕っぷしがいいからって調子に乗んなよアホ山が。
とか思っていたら、不良たちの口から出たのは
「昨日美味かったって聞いたから来たんだけど」
であった。
やばい、やっぱり俺には不良が分からない。
「あ、内山。なんかお前呼ばれてたぜ。校舎裏来いって」
「え? 俺ー?」
やってきた不良たち全員にお粥を売りさばいたあと、出ていく前に一人の不良が内山にそう言った。
校舎裏って、定番だな。そんなことを思いながら鍋を洗おうとシャツをたくしあげる。
「どうしよー、校舎裏だってー。ね、トラちゃん、俺告られたらどうすればいー?」
「安心しろよ。多分告白のセリフはずっと前から君が気に食わなかった、だからよ」
「えー? なにそれ、熱烈〜」
ケラケラ。内山は笑いながら「じゃ、ちょっと行ってくるねー」と出て行った。
内山がいなくなっただけで静かになってしまった調理室が寂しいとか、正直自分でも恥ずかしいことを思いながら鍋を洗っていると、扉が開く音がした。
「おい、忘れも……」
「……お粥食いに来たんだけど、まだある?」
忘れ物でもしたのかと、内山だろうその人物に声をかけながら振り向くと、そこにいたのは見知らぬ男。
やばい、不良だ。
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