×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

14 - 11



俺と同じように両手を合わせた玲央がトーストをかじった。たったそれだけのことなのに、どうして絵になるのかこちらも不思議だ。


「お前、俺の弟じゃなきゃ食われてたぞ」

「え?」

「泉、あからさまに狙ってたろ」


朝からよくもまぁそんな爆弾を投下してくれたものだ。
あんずジャムを塗っていた手が震えたぞ、俺は。


「でも俺、やっぱり分かんないなぁ……。別に軽蔑……は、しないけど、好きな人以外とそういうことするの、不思議」

「その答えを俺に求めてんのか、お前は」

「……」


目玉焼きに塩こしょうをかけながら玲央が言う。
その返事にげんなりとしたまま、ジャムを塗り終えたトーストをかじった。瞬間、広がる甘みに疑問もどこかに飛んでいく。
しばらく互いに黙って食事を進めていたが、先に沈黙を破ったのは俺だった。


「そういえば旅行鞄のヒモがさ、切れちゃって。今日買いに行くけど……玲央は仕事ねぇの?」

「今日は休みだ。……旅行鞄って、あの古くてだっせぇやつか」

「……ださくて悪かったな」


確かに古くてださいけど、あれしか持ってなかったんだよ、ちくしょう。


「ふーん……じゃあやるよ」

「? 旅行鞄?」

「あぁ」

「え、余ってんの?」

「あぁ、貰いもんだけどな」


そう言って、最後の一口になったトーストを食べ終えた玲央が、パンくずのついた親指をぺろりと舐める。
その姿から潔癖症などと、一体誰が想像できようか……。


「ん、くれるなら欲しい」

「あぁ、食い終わったら出す」

「うん」


旅行鞄を買う手間が省けた。浮いたお金でお土産の選択肢も増えるかも。
そんなことを考えながら、意外とイケるあんずジャムに、俺は魅了されていったのであった。




 


しおりを挟む / 戻る