翌朝、トーストを焼いている俺の元に、あくびをしながら部屋から出てきた玲央から朗報が届いた。
「泉ちゃんと、隆二さんが付き合う?」
「あいつらお互いのこと、ずっと好きだったからな。当然の流れだろ」
ふわぁあ。大きなあくびが止まらない玲央がそう言い残し、洗面所へと向かう。
ちょうどトーストも焼き上がり、それをプレートに盛りつけて、冷蔵庫からマーガリンとあんずジャムを取り出す。
ちなみに俺の好きなブルーベリージャムは昨日、切らしたばかりだ。
玲央が新聞を持って戻ってきた。そのまま食器棚から自分のカップを取り出すと、用意しておいたコーヒーメーカーからコーヒーを注ぐ。
対面式キッチンから見て左が玲央、右が俺の席。定位置に腰を下ろした玲央が新聞を広げた。
ふとフライパンの様子を見れば、目玉焼きも頃合いだった。
「でも驚いた。泉ちゃん昨日あんなだったのに……」
少し変わった潔癖症である玲央は、自分が認めた人間の手料理しか食べない。
が、俺が志狼に攫われたあの一件以来、朝食である目玉焼きとトースト、盛り合わせのウィンナーとサラダだけは必ず食べてくれるようになった。
……とは言っても、果たしてそれを手料理と呼んで良いのかどうかは疑問だが。
完成したプレートを玲央の前と自分の席に置く。
自分のカップを取り出して麦茶を注いでいると、新聞を読み終えたらしい玲央が傍らにそれを置いた。
「だからだろ。俺を引っぱたいてアイツなりに清算したんじゃねーの」
自分でいれたコーヒーに口をつけ、玲央が言う。
俺も席につき、両手を合わせた。
「いただきます。……でもさ、そうだとしたら女の子ってすごいね」
どうしようもないほど悩んで悩んで、自分で答えを見つけたかと思えば、こちらが驚くほどの行動力で自分なりの区切りをつける。
そのスタミナは一体どこから来ているのだろうか。不思議だ。
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