「……」
「……なんだよ」
呆然と玲央の顔を見つめている俺の顔がそんなに可笑しかったのか、玲央は若干ふて腐れたような目でこちらを伺っている。
「……それ、て、さ……。その、だから」
その目に気押されて自分の気持ちを伝えようと、身振り手振り動かしてみるのだが、俺とは違っていたって冷静な玲央は煙草の煙をくゆらせながら微かに笑った。
「家族が毎年墓参りに行くってだけだろ。なにか間違ってるか?」
「――……っ…!」
いいや、間違っちゃいない。けど、どうした。
目の前の玲央はニヤニヤと口角を上げ、それを見てからかわれていることに気づくも、本当に、どうした玲央。
まるで大型動物を懐柔する飼育員のような気持ちになりながら、俺はふと気がついた。
あぁ、そういえば玲央……泉ちゃんと……。
「……いや、嬉しいなって思って。当たり前のことなのに、すげー嬉しい」
「……」
「ありがとな、玲央」
そういえば玲央は泉ちゃんとあんなことがあって、きっと玲央にしては珍しく落ち込んでいたに違いない。
だから最も身近にいる俺をからかって気を紛らわしているのだろう。
そう結論づけた俺が穏やかに微笑むと、逆に玲央の顔が歪んだ。そりゃもう、盛大に。
「なに、その顔」
「……お前、相変わらず小っ恥ずかしいこと、平気で言うよな」
「……」
そう言った玲央が煙草を消してトイレに立つ。
背中を見送りながら俺は「玲央も結構言ってるぞ……」と密かに突っ込みを入れたのであった。
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