×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

14 - 1



目の前の状況を、一体どこから説明すべきなのか。
……俺は頭が良いほうではない。自覚しているからこそ、今はただ苦笑を浮かべる他なかった。


「小虎くん、聞いてるのぉ?」

「もちろん聞いてるよ――泉ちゃん」


完全に酔っ払いと化した泉ちゃんに、ただ苦笑を浮かべる他なかったのである。




ことのはじまりは志狼と病院に行った今日、その夜だった。
俺は玲央に言われた通り、せっせと荷造りに励んでいたわけだが、最初にこの土地を訪れたとき使っていた旅行鞄のヒモが途中で切れたのだ。
縁起が悪いと思いつつ、直すにも鞄自体、相当古かったことから、新しいものをバイト代で購入しようと考えていたそのとき――ピンポーン……インターホンが鳴ったのだった。
シャワーを浴びていた玲央に代わって出ようとすると、ちょうど上がったらしい玲央が下だけ穿いて玄関に出た(それはそれでどうかと思うのだが)
扉を開けた先には、目を真っ赤に腫らした泉ちゃん……そして、なにを思ったのか、彼女は振り上げた片手を目標めがけて振り下ろし――。

パァアンッ!

玲央の右頬に見事なビンタをかました彼女は、なにも言わずに俺を連れ去ったのである。


そして彼女に連れられるまま、俺は休みを貰っていたはずのカシストで、今日も今日とてお粥を作っていたのであった。
普段と違うことと言ったら、来店した客が泉ちゃんの気迫に押され、そのまま帰ってしまうということだろうか。




 


しおりを挟む / 戻る