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駅前で別れて帰路につく。
この感情の正体を誰かに聞いて欲しかった。
いや、誰かなんて曖昧なものではく、相手は一人しかいなかった。


「あれ?」


珍しいこともあるものだ。部屋に明かりが点いている。
夏休みだからとモデルの仕事が増えた玲央が、俺より先に家にいるのは珍しかった。
その上、まだ時計の針は18:39。

途端にうずいてきた体を曖昧な感情で誤魔化してエレベーターに乗り込む。
頭の隅でなにを作ろうかと考えながら、必死に言葉を繕っていた。

部屋の前までくる。試しにノブを回せば、すんなりと扉は開いた。


「ただいまー」


あれから二度目の「ただいま」と言える立場に嬉しさを覚える反面、俺の緊張は最大に達していた。
リビングに入ると、ソファーで寝転んでいる玲央が見える。なんだ、寝てたのか。――まぁ別に、なにも期待はしてなかったけど。


「玲央?」


一応声をかけてみたが、やはりその両目は閉じられていた。
長いまつげだなぁと感嘆しながら、自分の部屋に向かう。
たいした物も入ってはいない鞄を片付け、部屋着に着替えている途中、ガタンと音がした。


「玲央? 起きた?」


シャツの裾を下げながらリビングに戻れば、起きたらしい玲央が煙草を吸っている。
起きて早々、頭が痛くなったりしないのだろうか?
こちらをちらりと見た玲央の目は、寝起きのせいか鋭い。


「……おかえり」

「え? あ、うん、ただいま。今日は早いんだな?」

「……まぁな。お前はバイトどうした」

「ん。ちょっと用事があって、休んだ」

「ふーん……」


ふぁあ。大きなあくびをした玲央が、なぜか今は大型動物に見える。
俺はとりあえず冷蔵庫からビールとお茶を取り出し、玲央が座るソファーではなく、床に腰を下ろした。




 


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