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「前にも俺、言ったけどさ。やっぱり志狼は俺の憧れなんだ。普段めったに顔にも出さなくて、でもちゃんと気を使えて、優しくて。それってさ、志狼一人が作り上げたものじゃない。志狼の両親が、志狼の周りの人たちが、たくさんたくさん愛情をかけてくれたからこそ、今の志狼があるんだって思うんだ。
だから志狼は幸せなんだなぁって、俺、思うんだよ」

「……」

「そんな志狼を、どうして俺が笑えると思う?
なぁ志狼、志狼のことを笑っていいのは、志狼だけだ」

「……」


留めていた力が急激に増していくのが分かった。
志狼のことを羨ましいと思ってしまう自分が、どう足掻いても存在してしまうことを俺自身分かっていたから。


「過ぎたことにとやかく口を挟むことはできない。志狼のことを笑ったやつらを怒鳴りにも行けない。俺は、やっぱりカシストでお粥でも作って、お前が来てくれるのを待つことくらいしかできないけど……それでも、こうして励ましにもならない言葉しか送れないけど、でも、でもな」


ぐっと力を込める。
そうでもしなきゃ、お前は愛されてるんだって、志狼に叫んでしまいそうで怖かった。


「でも、だからこそ、俺は志狼のこと……笑わねぇよ」


彼女と志狼の間にある家族というものを見た今、俺は少し感化されているのだろうか。
この言いようのない高鳴りの正体を暴くつもりはないが、忘れてもいたくない。

なぁ志狼、自分のことを弱いと言える人間を笑えるやつがいたとしたら、それは自分も含めてきっと、誰もいないと思うよ。

くすんでいた志狼の双眸が、そっと光を受けて色づいていくような気がした。




 


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