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「だからここに、あの人の元でしばらく過ごせって言われたとき……あぁ捨てられたんだなって、漠然とそう思ったんだ……。
認めたくなかった。だけど逃げ出したことを認めるのも嫌だった……」

「……」

「……だから俺……、俺、本当……なに、してんだろ……ははっ」

「……」

「……だっせぇよな……笑えよ」


先ほどまでの勢いはどこへ行ったのか。しなしなと力が抜けていく志狼の体が小さく見える。同時に俯いていくから、余計に。
そしたらなんだか急に俺の力も抜けて、でもそんなこと、あっちゃいけなくて。


「笑わねぇよ」

「……え?」

「笑えねぇよ」


抜けていく力を無理やり留めて口を開く。

見ていただけの俺にもはっきりと分かったことがある。
それはやっぱり、子供と大人の違いはただどうしようもなくかけ離れているってこと。


「なぁ志狼、俺たちはさ、どんなに大人ぶったって結局子供なんだよ。それはどう足掻いても覆せない。だから、俺たちは間違ってもいいんだと思う」

「……」

「間違ってもさ、それが間違いだって言ってくれるのが大人なんだよ。
俺、今日見てて思ったなぁ……あぁ志狼はなんて幸せなやつなんだろって、皮肉とかじゃなくて、本当にさ。
志狼は捨てられたって言ったけど、俺は梶原さん……あ、えと志狼のおばあちゃんの考えは当たってると思う。
多分さ、志狼とそっくりなんだよ、志狼の両親は」

「……そっくり」

「――うん。全部自分の中に溜め込んで、結局最後、爆発しちゃう。
……なんて言ったら、志狼にも志狼の両親にも失礼だけどな」


悪い。一言だけ付け加えて笑うと、志狼は目を丸くして、そのまま呆然と俺を見つめていた。



 


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