「元気出た?」
「は?」
最悪な後味につい睨むような形で内山を見るが、アホはなんだか嬉しそうに微笑んでいる。
「なに? なんか言った?」
「んーん。ね、トラちゃん。俺やっぱ料理の才能ねーわ」
「あぁ、たとえ世界中の人間がお前の料理を認めなくても俺が認めてやる。殺人級だってな」
「きゃー! 惚れるー! 抱いてー!」
「アホ」
ケラケラと笑う内山につられて笑ってしまえば、内山はもっと嬉しそうに笑うもんだから、俺はつい「隠れMか、コイツ」とか思ってしまった。すまん、内山。でも多分お前はMだと思う。
「ね、トラちゃん。俺ね、トラちゃんが笑うと嬉しいよー」
「そりゃ良かったな。俺もお前がいると飽きないわ」
「マジでー? こういうの、相思相愛って言うんでしょー? やったねー、俺たち相思相愛だね。あ、でも俺にはマリちゃんいるんだ、ごめん、トラちゃん」
「なにがごめんなのか全然分からない」
お前の思考回路がまるで分からない。本当に。
それでもやっぱり内山はニコニコしていて、俺の内山隠れM説は確たるものとなった。
それからアホみたいな話をして、昼が近くなってきた頃にお粥の準備をし始める。
絶対に来ないであろう不良のために、だ。
もちろん売れなかった場合はすべて内山に買わせる。言いだしっぺなんだからこれくらい喜んで買い占めろ。
「内山? お粥食いに来たぜ」
「なんで来た」
そんなことを思いながら鍋を見守っていると、何故か可笑しなことを言いながら不良が入ってきた。思わず口に出して突っ込んでしまうと、内山はケラケラと笑いながら床を叩いている。
そんな姿を若干睨みつつ、入ってきた不良を見ると、それは元調理室の住人、内山に負かされた上級生らしき不良たちであった。
「あ? 文句あんのか?」
「いえ、ないです」
俺の突っ込みに不機嫌な睨みが飛ぶ。すぐさま利口な口調を示すと、内山はさらに笑い転げる始末。仁さんに言いつけたるわ。
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