「どーですかトラ先生」
「ねぇよ。お前、これはねぇよマジで」
翌日、一時限目から調理室にてサボっている俺の前に出されたのは、茶色く変色したお粥らしきものだった。
製作者はもちろんアホの内山である。
「なんでー!? 食べてないじゃーん!」
「食べなくても分かる。これは絶対に売れない。いいか、絶対にだ」
「二回言ったー!」
ギャーギャー! 騒ぐ内山にため息をこぼしながら、どうしたらこんな色になるのだろうとお粥らしきものを見るが、その答えが出ることはない。
「考えてみなさい内山くん。まずおかしいとは思わないか、この茶色はどうしたら出るんだ? ん? なにをどう入れたらこんな色になる?」
「チョコレート入れてみたー」
「うん、お前アホだわ」
キッパリ言い放ってやると、内山はひどーい! とか言いながらスプーンを取り出そうと食器棚に走っていく。
仁さん、俺、やっぱりこいつと友達続ける自信がないです。
「これで美味しかったらトラちゃん謝ってよー?」
「あぁいいとも。土下座でも逆立ちでもしてやるよ」
「へー?」
にやり。笑う内山に嫌な予感がして、茶色いお粥に伸びるスプーンを思わず止めそうになった。が、それよりも早かったのは、内山がすくった茶色いお粥が俺の口に突っ込まれるほうだった。
たいして味わうこともなく呑み込んでしまえば、俺の口からはスプーンが出ていく。
「……にがっ!」
「あははははっ!」
苦い! 尋常じゃないほど苦い! そして不味い! クソ不味い!
「て、めっ、内山! これチョコじゃねぇだろっ!」
「チョコですー。カカオ99%ですー」
「くそっ! アホなお前のことだもんな! ちくしょう!」
にやり、なんて笑うもんだからつい焦ってしまったが、やはり内山はアホだった。
俺は水道水でなんどもうがいをして、しぶとく居座りつづける後味をすすぎまくった。
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