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「ま、あんなアホだけどよ、これからも仲良くしてやってくれ」

「そりゃまあ、なんだかんだ言って俺、友達アイツしかいませんから」


手際よくナポリタンを作り出した仁さんに返した言葉で自己嫌悪。そんな俺を仁さんは頭を撫でるという慰めで励ましてくれた。


「や、そうじゃなくてさ。トラがこれから何人友達作っても、雄樹とも仲良くしてくれってことだよ」

「? そりゃ、もちろん」

「はは。そうか、そうか」


嬉しそうに、それはもう、弟よろしく、なんて言う兄のような笑みを浮かべて、仁さんはいつになく上機嫌で俺の頭を撫でまわす。
内山はアホみたいに仁さんに懐いているが、最近、俺もその理由が分かってきた気がした。

なんていうか、面倒見がいいんだよな、この人。


「きゃー! メイドは見た! 浮気の現場!」

「メイドって誰だよアホか」


いつのまにか戻ってきた内山がニヤニヤと、そんな俺と仁さんのやり取りを見て叫んでいたが、すぐ仁さんに一蹴されていた。
本当にアホな内山だ。





「……っはー」


どさり。バイトを終え、帰ってきたと同時に自室へと向かい、ベッドに身を預ける。
バイト時間、延々とお粥を作るのも正直楽じゃない。けど、不満でもない。むしろ、カシストは俺の憩いでもあった。

必要最低限なものしか置かれていない自室を見る。見事なまでに殺風景だ。これが花の男子高生の部屋だとは思えない。思いたくもない。

そんなんだからだろうか、俺は自分でも分かるくらい、己の居場所をカシストに見出していた。


「……」


強く目を瞑り、そっと開ける。
変わるはずもない部屋を見回して、ため息を零す。

馬鹿か、俺は。

ここは確かに俺の……兄の家だ。その一室が俺に与えられているだけで、それだけ。それ以外、ここにはない。


「兄弟みたいだよな……あの二人」


脳裏に浮かぶ内山と仁さんのやり取りに、口元がつい緩む。
羨ましいとか、正直そんな気持ちもあるが、そのどちらかの居場所を望んでいるわけではない。




 


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