それから事はトントンと進んだ。材料調達をし終え調理室にてお粥を作れば、教師たちは大袈裟なリアクションで「旨い!」「これならイケる!」みたいなことを言いながら、なんどもなんども内山と俺を交互に視察していた。
それは明らかに、内山の様子を見て言っていただけだ。
ここまで来るともう憐れで不憫でならない。教師たち……それでいいのか大人のくせに。
そしてめでたくないことに、昼限定、調理部もといカシスト支店が不良校にて開店した。
断言する。絶対儲からないから。
「ははっ、お前らばっかだなー」
その日の放課後、いつもと同じようにカシストにてお粥を作る俺の隣で、カクテル作りに勤しむ仁さんが支店の話で笑っていた。
こうなってしまった原因である内山はもはや定着しつつあるフリルエプロンを翻しながら接客している。
「ま、楽しそうでいーんじゃねーの?」
「それだけですか、仁さん……」
「や、トラにはちょっとわりぃけど、雄樹があんなに元気なのも久しいからな。正直、俺は嬉しい」
「え? 内山はいつだってアホじゃないですか、アホの申し子ですよアイツ」
「はは。まー言えてるわな」
否定しない仁さんに少しだけ笑ってしまう。ピリリ、タイマーが鳴ったので鍋を退けて次の鍋をそのままコンロに乗せる。できあがったそれをお盆に乗せ、なぜかソファーに座って客と談話しているアホを呼んだ。
「仁さーん、ナポリタン二つお願いしま〜す」
「おう、了解」
ヘラヘラと笑ったままの内山は、お粥を受け取りながら注文を伝える。俺はかけたばかりの鍋を退けてコンロを一つ空けた。
すぐさまフライパンを取り出した仁さんがお礼を言いながら火にかける。
最近、やはりお粥だけでは飽きているのか、元々置いてあるメニューの注文も増えてきた。
正直、仁さんの作る料理はどれ一つ俺のお粥など足元にも及ばぬくらいに美味い。それこそほっぺが落ちるくらいにめちゃくちゃ美味い。
だから仁さんが作るメニューの注文が増えることも、時間の問題だった。
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