そういえば、玲央はどうしているだろうか?
もし撮影が終わっているなら、俺が消えたことを不審に思って探しているだろうか?
いや、友達の、志狼のとこに行っていると、またデスリカにでも女を抱きに行っているか?
……ありえるな。
「……ははっ」
思わず声に出して笑ってしまう。あぁ、ちくしょう。なんてことだ、ちくしょうめ。
巻き込まれて、それを今になって実感している。あとになって襲ってきた実感とやら痛みが、ひどく辛い。
いつのまにか視界が霞んで、どうやら俺は泣いているらしい。頬に冷たいそれが伝う。
唇にまで流れてきたそれを舌で舐めとった。うん、しょっぱい。
「……本当、ばっかみてぇ」
顔を上げればそこにはガラスの割れた窓があり、その向こうには星など見えない空がある。けど、驚くほどハッキリと、月だけはその姿を露わにしている。
たまに雲で隠れても、月は必ず顔を出し、いたずらに俺の足元を照らしていく。
……恐ろしいほど、清々しい気分だった。
最近、ちょっとばかし色々あって、どうやら俺は自分で思っている以上に悩んでいたらしい。
それを他人のせいにするつもりは毛頭ないが、腹が立つから玲央には文句の一つや二つ、言ってやる。
あぁ、情けない。こんなくだらない、けど不器用な生き方があるなんて……くだらない。――けど。
「……くそ……っ」
涙が止まらない。誰も見ていないと分かっていながらも、俺は声を殺して泣いた。
いいや、目撃者は一人――月だけが俺を見つめていた。
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