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「俺と友達になった。裏切られた。そういう風にさぁ、起こった出来事を頭ん中で箇条書きして、それをただ受け入れてるって感じだよね」

「……あはっ、うん、俺もそれ、思う」

「はぁ?」


歪んだ志狼の顔に、無理やり笑みを浮かべる。


「俺、そうなんだよ。なんつーか、物事に関してちゃんと理解できてないっていうか、あとから理解が追いついてくるっていうか……だからさ、多分、終わったあとにあぁ、俺は志狼に裏切られたんだなーって実感するんだよ」

「……」

「ずっとそうなんだよなぁ、なんか。実感が湧くの遅いっていうか、ほんと……面倒くさい性格してるって、自分でも思う」

「……」

「でもさぁ、それって逆に考えれば、そうやって悩むっつーか、実感するまでの時間を味わえるっつーか、ちゃんと実感できるんじゃねぇかって、最近思うようになった」

「……は?」


ガラスの割れた窓から射す、弱い月明かりが雲の隙間から漏れてくる。
その光が志狼を包めば、銀の髪はキラキラと光っていた。


「だからつまり、志狼に裏切られたけど、仲間らしい不良にも殴られたけど、こうして普通に話していられるのはまだ、俺は志狼とダチだって思ってるからだよ」

「……はっ」


光の中で、志狼が鼻で笑う。そんな姿でさえ儚げで、今にも消えそうなのに。


「くっだらねぇ」


なのにお前はそうやって、煩わしいって顔で俺を見るから、そこにいてくれることを実感する。――皮肉だろ?

それから志狼は煙草を地面に吐き捨てて、踏みつぶし、やはりまた、汚物でも見るような目で俺を睨み、去った。
一人残された俺は、ここにきてやっと空腹と喉の渇きを思い出す。一体どれほど飲み食いをしていないのか定かではないが、どうせならまだ思い出したくはなかった。

月明かりが足元を照らす。一応履かされたサンダルを見て笑えば、体の痛みなど気にすることもない。




 


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