「――というわけで支店を開きます!」
「……あ?」
内山が場所取りで勝ち取った調理室にて、目覚めたアホの第一声がそれだった。
「なに、支店って」
「ばっかだなー、トラちゃんはー。ここでカシストの支店をやんの! ま、名目上は調理部ってことで〜、お昼限定でお粥売るべー」
「とりあえず夢の世界から帰ってこい」
アホだ。やっぱりコイツはアホだ。
俺の中で内山の位置が確たるものになりつつある中、当の本人はケラケラと笑いながらガス栓を開き、火をつけようと試みている。
「あれ? つかなーい」
「そりゃそうだろ……不良校でガス通ってたら今頃燃えてんだろ、この高校」
「あー、なるほどー」
馬鹿なのはどちらだろう。そんなことを思いつつ壁に掛けられた時計を見る。もう昼過ぎだった。
とりあえず昼飯を取りに教室へ戻り、鞄を持って調理室に戻れば、アホはまだ諦めていなかったのか、またガスコンロをいじっていた。
「ね、先生に言えばガス通してくれんじゃね?」
「んなわけないだろ。ガス通した時点で全焼だぞ」
「えー? トラちゃんウケる〜」
「お前の頭が一番ウケるわ」
ケラケラ、ケラケラ。笑っていた内山は急に立ち上がり、「じゃ、職員室行ってくるねー」などと出て行った。
どうしよう、やっぱりアホだあの内山。
「は?」
それから数十分後、教師を連れてきたアホの言葉に、俺は自分の耳を疑った。
「だからー、お粥食べてみてー、それから決めるって〜」
「……は?」
内山いわく、調理部をやるのはいい。だがガスを通すのはやはり難しい。だからまぁ、とりあえずそのお粥とやら、食べさせろ、らしい。
んな甘い話があるものか。どうせ内山が教師の胸倉でも掴んで脅したに決まっている。なんせここの教師は生徒に弱いのだから。
「というわけでー、今からコンビニ行こ? 材料調達するべーし」
「……」
えー、ちょっとマジで、突っ込んでいい?
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