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「そんとき、なんだろうな。俺が雄樹に惚れたのは。
最初の頃は憎まれ口しかろくに叩けねぇで、喧嘩してはボロボロになってきて、そのくせ平気な顔してまた喧嘩して……なのに、アイツは俺を拠り所みてぇに思ってくれてたんだよ。

抱きしめたよ。落ちこぼれじゃないって言われたとき、暴れるアイツの言葉無視して抱きしめた。
喧嘩してはここに来る雄樹に、なにもしてやれねぇ俺にそんなこと言うんだぜ?
不良どもに礼言われたときだって罪悪感があったのに、雄樹に言われたとき、信じられねぇくらい胸が熱くなった。

あぁ、良かったんだって。俺がここで不良どもを受け入れていることも、昔不良どもを殴っていたことも、司に頭下げて面倒見てもらったのも、全部全部、馬鹿なことだけど良かったんだって。
間違いではあったかもしれねぇ、けど……間違ってても、良かったんだって」


ゆっくりと、こちらを見る仁さんと目が合う。
ゾッとするほど、美しい姿がそこにはある。到底俺には届かない、その場所に彼はいる。


「雄樹にそう言われたとき、犯した俺を好いてくれたとき、ブラックマリアじゃなく俺を選んでくれたとき、アイツがくれたそういう時間が俺の幸せだ」

「……」

「んで、そんな雄樹とダチんなって、昔のゴタゴタひっくるめて掻き回して、そのくせ果敢に牙向けるトラが今日までしてくれたすべても、俺の幸せだ」

「……っ」


ふわりと、優しい笑みを浮かべる彼に、ふたたび顔が赤く染まった。


「だからよ、トラ。お前が思う以上に世の中ってのは複雑で、なにが起きるか分かんねぇ」

「……はい」

「辛いことも泣きたいことも、死にてぇって思うこともある。けどな」

「……」

「けど、そんな不幸も忘れるくらいの幸せだってゴロゴロ転がってんだ。だから覚悟しろ、トラ。お前はこれからそういう不幸や幸せに振り回される」


トン。俺の胸に指をついた仁さんが、口角を上げた。


「お前の都合なんて関係なしに今以上の幸せは襲ってくる、だから、それを受け入れる覚悟をしとけ、トラ。――いいな?」

「……はい……っ!」


じんわりと、仁さんの触れるそこから夏の暑さではない熱が伝わった。




 


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