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「おら、座れ」

「まーまー、お客さん、一杯いっぱい」

「……なんですか、これ」


説明させてくれ。
俺はいつものように夕方シフトの時間通りカシストにやってきた。何度も確認したが、今日は定休日ではない、営業日だ。
なのにエレベーターで降りたバイト先は、入り口に置かれた背の高いパーテーションに「この先トラちゃん以外、立ち入り禁止」というアホな紙が貼ってあった。言わずもがな、雄樹の手作りだろう。

……まぁ、それは、いい。いや、よくはないが置いておく。

んで顔を歪ませながら店内へ向かえば、なぜかいつもは規則的に置かれたローテーブルがくっついていて、その上には大量のごちそう。そして高そうな酒瓶。
「やべぇ、意味分からん」とか思った瞬間、カウンターから飛び出してきた雄樹がクラッカーを鳴らした……そのうしろからは煙草を吸う仁さんまであらわれる始末。

そして俺は、ゼブラ柄の布が敷かれたソファーに座らされ、仁さんからは小皿に盛った料理を、雄樹からは甘い匂いの酒を、両手に勧められていた。


「いや、説明しろよ!」

「わわっ! トラちゃんがご乱心!」

「アホかっ! 意味分からん! なんだよこれは!」

「えー? なにって、お祝いじゃん、おいわい〜」

「はぁ? 誕生日はまだ先だぞ?」

「ちっがーう。違うでしょー、そうじゃねーべよ!」


ズビシッ! そんな効果音を背に雄樹が俺を指さす。
そしてにんまりと笑みを浮かべ、言った。


「玲央さんと和解した記念でしょーが、馬鹿トラちゃん」

「……え、」


なんで知っている。そう言おうとすれば、右隣の仁さんが頭を撫でてきた。


「昨日な、お前が帰ったあと司が来てよ、お前と司がブラックマリアの話してる辺りからぜーんぶ、録音したやつ聞かせてもらった」

「ろっ、録音!?」

「やっぱり気づいてなかったか。アイツ、パソコンで録ってたんだとよ」

「……な」


なんじゃ、そりゃ。




 


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