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「おい、今日は帰るから風呂……」

「あ、玲央」


部屋からひょっこりと玲央が顔を出してきた。かと思えば、一瞬で歪む。
そんな玲央が面白いのか、司さんと豹牙先輩が一層笑みを深くした。


「お前が我慢しねぇっつうなら、俺も同じように我慢しねぇ。けど最後まで世話はしてやる。それが俺の償いだ」

「馬鹿すぎて――目が離せねぇな」

「「はっ」」


ニヤついたままの二人が玲央の真似をして、最後に息を合わせて鼻で笑った。俺はその姿に笑いそうになったが、玲央がいるので必死に堪えておく。
しかし暴君玲央がそんな二人を許すはずもなく――。


「あ? んだよ」

「おい、玲央まさか……」


無言のまま近寄って、豹牙先輩の胸倉を掴んだ玲央に司さんが顔を青くする。その手が玲央の腕を掴むその前に――。


「んぐっ!?」


――玲央は、豹牙先輩にキスしやがったのである。うげぇ。

すぐに離れた玲央の唇が「への字」に曲がる。気持ち悪いならするなよ、意味分からん。


「玲央、てめぇ……」

「あぁ? てめぇこそ人の弟に同じことしたんだからあいこだろうが」


眼鏡の奥で光る司さんの目が怖い。それでも怯むなんてこと、玲央がするはずもなく。

ポン。ふいに肩が叩かれた。見上げればあくどい笑みを浮かべた豹牙先輩――まさか。


「んーっ!」


その、まさかである。
豹牙先輩はそれはそれは熱烈なキスをかましてきやがった。顎を掴まれているせいでろくな抵抗もできずにいれば、玲央の舌打ちが聞こえた気がして、豹牙先輩が離れていく。
見れば、玲央が豹牙先輩の後頭部を掴んで引き上げたらしい。それでも豹牙先輩は「してやったり」みたいな顔で笑っている。もう一度、玲央が舌打ちをこぼした。

つーか俺、司さんにファーストキス奪われるわ豹牙先輩にキスされるわで散々だな、ちくしょう。

ガシッ。「え?」なにかが後頭部を掴む。嫌な予感がしたその瞬間――。


「――っ!?」


玲央が……俺にキスしてきやがったのである。
唇が離れた瞬間、俺はペッペッと吐き出した。ついでに吐き気も催してきたぞ、うげえ。


「んだその反応、うぜぇ」

「あぁ? どこの世界に兄弟でキスするやつがいんだよ、気持ちわりぃ」


げんなりとしたまま玲央を睨めば、やつはいたって平然な顔つきで豹牙先輩たちを顎でさす。


「こいつら、兄弟でセックスしてんぞ?」

「――は?」


ギギギ。ぎこちない動きで豹牙先輩たちを見る。
堂々と人に言えることではない。むしろ非難されるだろうその対象である二人なのに、なぜか司さんは笑顔で手を振ってるし、豹牙先輩は普通にしている。


「……」


背徳などみじんも感じられない二人を見て、俺は必ずこの秘密を死守しようと心に決めたのであった。




 


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