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のそり。起き上がった内山はあくびを一つして、生理現象で浮かんできた涙を擦りながら、また俺に聞いた。
で、どこにする? なんて。


「お前、ちょっと起きろよ」

「起きてんじゃーん。見なさいよこの二徹した俺の眼(まなこ)を!」

「なんで二徹してんのお前」

「それがさー、マリちゃんが俺のこと寝さしてくんねーの。あ、マリちゃんってエロゲのキャラね」

「え、お前エロゲやってんの?」

「えー? 偏見? 差別? 嫉妬?」

「待て、最後はおかしい」


て、そうじゃない。
あやうく内山のアホ話に流されるところだった。


「じゃなくて、場所取りする気かって聞いてんの、俺は」

「うん、しよー?」


はぁ? なんて素っ頓狂な声が出そうになる。それを堪え……きれずにため息を零せば、内山はんー、と背伸びをして立ち上がった。
呆然とそれを見ていると、にやーと笑った内山に腕を掴まれ、そのまま廊下へと引きずられていく。


「おい内山、マジ?」

「マジ! マジと書いて本気と読む!」


あ、こいつマジだ。ふとそう思ったのは、内山のアホな台詞が要因になったわけではなく、先ほどまで眠そうにとろけていた目が、まるで野獣のようにギラついていたからである。
この目を俺は知っている。内山と出会い、いくどとなく見てきた。

そう、この目は喧嘩をするとき、こいつがする目なのだ。


「というわけで、ドーン!」

「!?」


引きずられたままやって来たのは調理室だ。その扉を豪快に開け放った内山はズカズカと入っていく。そのうしろからこっそり中を覗けば、上級生であろう不良たちが煙草とエロ本を乱雑させながらフケっていた。


「あ? なにお前」

「……内山じゃなかったっけ? 確かブラマリから追放された奴じゃん?」

「あー……あぁ、あー、内山! へー、これが噂の内山くんなわけ?」


エロ本を見ていた不良たちがニヤついている内山を笑うが、それを気にもとめない内山はトントン、となんどかつま先で床を叩くと、勢いよく近くにいた不良の顔を蹴った。蹴りやがった。




 


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