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どんな表情で司さんを見ていたのか分からない。フッと微笑んだ彼が……スペードのクイーン、ブラックマリアを出した。
手札のカードを見て息を呑む。あぁ、そうか、彼はこれを狙って――……まさかそんなはず。


「どうしたの? 出さないの、カード」

「……」


俺の手札にはスペードのクイーンより強いカードはない。
スペードのキングは先ほど威嚇のつもりで出してしまったし、他の柄でもキング、エースはない。そもそも柄が違えば意味もない。

……どこか汗ばんだ手でスペードの9を出せば、彼は笑いながらブラックマリアを手に取った。


「これで俺はマイナス三十点……だけど残念だね。スラム適用でプラス三十点になって、ゲーム終了だ」

「……」


彼が手札のカードをテーブルに投げ捨てた。俺も意味をなくした手札のカードをテーブルに置く。


「その人を仮にAとして、Aは俺に情報屋として生きることを命令して、同時にこの街に点在する不良チームのことを色々教えてくれた。俺ね、お金が一番信頼できると思ってる」

「……」

「だから情報屋をやって、馬鹿どもから金を集めたよ。売る情報を惜しいと思ったことは一度もない。俺は誰の味方でもあって敵でもあった」

「……」

「でもまぁ、色々思うことがあって、仁とブラックマリアをはじめたんだー」


膝の上で拳を握る。やはりまた、俺の手は空っぽだ。

おもむろに、司さんがスペードのエース、キング、クイーンを並べる。


「この三枚は一枚だけなら罰点カードで手にしたくはない。けどさぁ、スラムのように少し手を加えただけで、敗者は勝者になる」

「……」

「悪を手中に収めて勝つことも、人間にはできるんだよ、小虎くん」


ズキッと痛みが走った。胸か、頭か、それとも心か。
目を細めてその三枚を見つめる。どこか嫌な気分が背中にのしかかった。


「だけど考えてもみればさぁ、これはゲームなんだよね。だから俺も楽しめなきゃいけない」

「……」

「だから俺は――ブラックマリアになった」


タンッ。スペードのクイーンに人差し指を置いた彼が卑しく笑う。
思わず俯いた顔が、震えるほど握りしめる拳を見つけてしまった。




 


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