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10 - 8



「突然だけどさ、小虎くんはこの街が好き? 越してきたんだよね、確か」

「はい、そうです、越してきました。好きか嫌いかだったら、好きですかね」

「そっかそっか」


リードすることを促されて思惑する。思い切ってスペードのキングを出せば、彼は嬉しそうに笑みを深くした。
そのまま彼がスペードのエースを出し、まさかの自爆だ。……トリックを取った司さんはこれで、マイナス十七点。


「俺はね、この街が嫌い。大嫌い」

「……理由を聞いたほうがいいですか?」

「あははっ。いや、聞かれなくても話すつもりだったけどね。まぁ、色々犯罪が起きててさ、そんなのこの街だけじゃないけど」

「はい」

「でもさぁ、俺がまだブラックマリアを作る前に、麻薬でブッ飛んだガキにお袋、刺されたんだよね」

「……え?」


出そうとしたカードが手から落ちる。司さんが笑った。
慌ててすぐにカードを表にしてテーブルに置く。なんてことない態度で司さんがリードすれば、このトリックも彼の勝ち。


「まぁ生きてるけどねー。でも、その事件のせいで豹牙がさぁ、色々おかしくなっちゃって」

「……」

「まー色々あった。あったよ、そりゃ。でも俺はどうでもよかった。家族が刺された? 豹牙がおかしくなった? んなのどーでもいい」

「……」

「んで、当時俺はさ、パソコンばっかやってたわけ。なにしてたかっていうと、ハッキングしたり色々。で、ちょっとドジ踏んで警察に捕まった」


彼がダイヤのエースを出す。ダイヤがもう手札にない。仕方なくクラブの6を出せば、このトリックも彼の勝ち。


「そしたら警察の中でも変わった人がいてさ、この街を正すために協力してくれないか、だって。警察が、だよ? ねぇ小虎くん、俺は思ったんだよねぇ、そのとき」

「……なにを、ですか」

「――あぁこの世に、正義なんてありゃしねぇ」


どこか背中に重みのある言葉が、確かに彼の口から発せられた。




 


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