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「で、どーすんの? 俺、仕組み分かんないからなにがなんだか」

「あぁ、とりあえずもう少し隠れてよっか。今出たら見つかるだろうし」

「じゃ、入るか」


起き上がった志狼が靴を脱いで先へ進む。そのあとを追っていけば、やたらと大きなベットが置かれた部屋に眩暈がした。


「う、わー。なんか動揺する」

「大丈夫? でも俺しかいないし、いいんじゃない?」

「なにがいいんだよ、挙動不審になってもか?」

「うん、俺が笑うだけ」

「それが恥ずかしいんだっつーの」


軽く志狼の背中を殴る。そしたら志狼が頭を撫でてくるから、大人しく撫でられてもみる。
正直、走りつづけて疲れていたのだ。少し休みたい。


「はぁー、ひさびさに走ったー」

「なんか飲む?」

「え? 飲み食いできんの?」

「そりゃね、ラブホだし」

「……うん、だからラブホの常識なんか知らないってば、俺」


赤いソファーに腰を下ろせば、隣に座った志狼が笑う。
食べ物や飲み物の写真が載った、まるでレストランなんかにありそうなメニューを手渡されて思わずしげしげと見てしまう。
あ、これうまそう。とか、あー、これ飲んでみたい。とか、意外と満喫している俺だった。


「……ぐすっ」

「ちょ、小虎……」


そんな俺は三十分後、志狼がついでに借りたDVDを見て涙していた。だって動物と人間の映画ってマジ泣ける。
志狼がティッシュで俺の鼻水やら涙を拭うが、とりあえずそれに身を委ねて画面を凝視する。今、お別れのシーンなんだよ、うわ、ほら、メアリーがジョンに冷たくしてる。わざと冷たくしてんじゃねぇか。


「小虎、鼻かんで」

「ん……」


無遠慮に鼻を覆ったティッシュを掴んでチーンとかめば、微かに笑った志狼がそれをゴミ箱に放る。
あぁ、あとでなんかお礼しなきゃ。そう思っているくせに画面から目が離せない俺であった。




 


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