「コーヒー。小虎は?」
「俺も」
席について早々、志狼が煙草を吸いだした。
すぐにやってきた店員に平然と注文を終えれば、店に流れる音楽が耳を刺激する。
「このあとどーする? ゲーセンとかカラオケとか……って流れじゃねーしな」
「そうだね。でも小虎とならどこに行っても楽しいよ、俺は」
ニコッ。微笑む志狼に顔が赤くなる。
こうもストレートに言われるのも照れるんだな、ちくしょう。
それでも邪な気持ちが働いて、俺も笑みを向けた。
「俺も、こうして志狼と出かけるの、すげー楽しい」
どこか「してやったり」感がふつふつと湧き上がる。
雄樹とはアホトークばっかりだったからだろう。なんだかこういうやり取りが新鮮で堪らないのだ。
しかし志狼が困ったように微笑むから、なんだか間違ったことをしたのかと焦ってしまう。
「どうしよう、俺、結構やばい」
「え? え、ごめん?」
「なんで謝ってんの? 小虎は笑っててよ。俺、小虎の笑顔好き」
「――っ」
あぁ、悪かった。俺が悪かった。降参です、負けを認めますとも、えぇ!
テーブルに顔を伏せて「降参です」と言えば、志狼は笑いながら俺の頭を撫でてきた。同時にコーヒーがやってくれば、香ばしい香りに恥ずかしさも散漫する。
「小虎、夕飯どーするの? 良かったらどっかで食べてかない?」
「あ、うん。俺もそうしたいって思ってた」
「本当? ははっ、なんか俺たち、息ぴったりって感じだね」
「? おー?」
なんだか楽しそうな志狼の笑顔に、理由もなく胸が弾む。
いや、理由なんて分かっている。ただ、「友達だから」なんてありきたりな理由にはしたくない。
こうして触れ合えた人との気持ちをもっと、大切にしたい。
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