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細い路地裏を通っていった先には転々とネオンの光る店が並ぶ。
人はその通りをネオン通りなどとまんまな名で呼んでいたが、その通りから少し離れたところには未成年たちが足を運ぶクラブやバーが存在していた。
その中でもひときわ客足が多いのは、三階建ての小さなビルの地下に設けられたクラブ、デスリカ。

だが最近、本当にここ二週間で一気に勢力を伸ばした店があった。
それはデスリカよりさらに地下に設けられたバー、カシスト。

エレベーターの扉が開くと同時に店内であるそこに足を踏み入れれば、すぐ右横の壁にはこんなポスターが貼られている。


〔お粥、はじめました〕


世界にたった一つしかない、内山手作りである。





「卵五つお願いしまーす」

「すいません、梅二つお願いします」


ぎゃーっ! とでも叫び声なのかやる気なのか何なのか、そんなものが口から発せられそうになっているのは、初バイトにてお粥担当を任命された俺、小虎だ。
その隣ではガスコンロを増設した仁さんが、いくつものタイマーを見つつカクテルを作っている。

なんでデスリカで酒飲んでるのにここでも飲むんだ、非行少年、少女、意味わからん。なんて頭の隅で思いつつも、今日も似合わないフリルエプロンをつけた内山にできあがったお粥をお盆で渡した。
そんなことを就業時間いっぱいしている俺だが、正直、楽しいと思っている。


「お疲れさん」

「……どーも」


やっとお粥作りから解放された俺は、いまだにエプロンをつけてスコッチを飲み続ける内山の隣にて、仁さんがくれた水を口に運んだ。
ぷはっ! なんておっさんくさい動作をすれば、隣の内山はぎゃはは、なんて笑いだす。


「トラちゃんうけるー。マジ最近おっさんくさいよね〜」

「……じゃあお前はアレだろ。アキバとか目指すんだろ?」

「メイドさん? やべー、似合うかもよ? おかえりなさいませ〜、ご主人さまぁ〜ん」

「…………きしょ」


すまん内山、マジで気色悪いわ。




 


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