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『上のクラブでたらふく酒飲んで酔っ払ったやつがここに来てお粥を食う。今にこの流れが絶対にできる。だからトラ、お前はお粥担当だ』

『なに言ってんですか仁さん、そんな甘い話あるわけないでしょ』


これがつい先日の俺と仁さんの会話である。
普通に考えてみても、絶対に俺の言い分のほうが正しい。
なのに……だ。なのに、なぜだ。


「梅と卵のお粥三つお願いしま〜す」


フロア担当を任命された内山が、びっくりするくらい似合わないフリルのエプロンを学ランの上につけて言う。
カウンターの中にいる仁さんの隣で、俺はその注文に顔を青くした。
ぎこちない動きで仁さんのほうを見上げてみると、彼は「ほれ見たことか」などとでも言いそうな笑みを浮かべている。


――そう、仁さんの言葉は現実となった。
クラブ、デスリカで浴びるように酒を飲んだ非行少年、少女たちがこぞってカシストへハシゴするようになったのだ。

それも、俺のお粥を求めて、だ。

信じられるか? いや、信じられない。


「ほれ、さっさと作れ」

「……あ、はいっ」


固まったままでいる俺を小突いた仁さんの言葉で、ハッと現実に帰還した俺はお粥を作り始める。
先日、友達を連れてやってきた彼女は、そんな俺をカウンターで楽しそうに眺めていた。

……失礼な話だが、ギャルや非行少女なんかとは繋がりもなさそうな彼女が来て以来、カシストは驚くほど大盛況を迎えたのである。
彼女いわく「私は彼女たちを連れてきただけだし」なんて言っていたが、その彼女たちの口コミが半端なかったのだ。

鳥よりも風よりも早く伝わったお粥の話はデスリカ以外からも客足を呼んでしまうほどになったのである。

それも、たった一週間で。
なにそれ、女子怖い。


「トラちゃーん、梅四つ追加〜」

「猫の手も借りたいっ!」


相変わらず似合わないフリルエプロンをつけた内山の追加注文の声に、思わず叫んだ俺は仁さんに軽く小突かれた。




 


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