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そのあと、気分の良くなった彼女をタクシーに乗せて見送ると、今日の反省会などと称されるものがカシストで行われ、俺は勝手に作ったお粥代と彼女のタクシー代という借金を課せられた。
それはまぁ、別にいいのだが。

問題は客だ。
彼女の看病中、恐ろしいことに客が訪れることはなく、仁さんの頭痛の種はひどくなるばかりだったのである。
それは俺もだった。このまま呼び込みができないのであれば、間違いなく行きつく先はクビだ。

内山は当てにならないし、マジでやばいぞ俺。


「……こんばんは」

「へ?」


――だというのに。
一体全体どうしたことか、一夜明けて元気を取り戻したらしい彼女が数人の友達らしき女の子たちを背に、カシストにやってきたのである。


「来ちゃいました」


してやったり。そんな笑みを浮かべる彼女に、俺はただ呆然と口を開けたまま立ち尽くしていた。
内山と仁さんが声を合わせて「客だ……」なんて呟いていたが、それどころではない。


「ここー? お粥の店って」

「うん。なんか優しい味がするんだよ」

「へー。ねぇねぇ、お粥もらえますかー? 私たち酔っぱらっちゃってー! あははっ!」


彼女は恐ろしく不釣り合いな女の子たちと一言二言交わすと、いまだ呆ける俺の前までやって来た。


「お粥、食べに来ました」


にっこり。まるで花でもふわふわと舞いそうな笑みを浮かべた彼女に固まると、カウンター越しに仁さんの腕が伸び、俺の襟元を掴んで引き寄せる。
思わずぐえっ! なんて声が出た。


「いける……いけるぞこれは」

「げほっ……なにがですか?」

「おいトラ」

「はい?」


今までずっとトラくん、と呼んでいた仁さんが凄味のある声音でトラと呼ぶ。
目線だけしか向けることができなかったが、今の仁さんはその強面な顔も相まって、極悪面をしていた。


「お前、今日からお粥担当だ」

「……は?」




 


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