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「うわっ!?」

「……動くんじゃねぇよっ!」


それはどうやら人の手で、俺はいつぞやのように両手を取られて捕らわれている。そっとうしろを見れば、なぜか血まみれになった不良。
ゾッとして暗がりのほうに目を向けると、なにかがキラリと光る。

ゆっくりと、闇の向こうから足が伸びてくる。黒のロングノーズは兄貴が持っているものと色違いだ。一瞬兄貴を連想したが、それはすぐに消え去った。
闇から現れたのは、銀髪をした短ランの美形だったのである。またイケメンかよっ!


「なに、それ」

「うっせぇ!」

「――え、わわっ!?」


銀髪の美形が前髪から覗く双眸をこちらに向ける。俺は兄貴の眼光に慣れているからたいして怖くもないが、いや、怖いけど、うしろの男はそれに怯えたように俺を美形のほうに突き飛ばした。
俺はそこら辺の物と一緒の扱いか?

当然、美形は俺を避ける。当然、俺は地面にぶっ倒れる。そして男が背を向けた瞬間、美形は一瞬で間合いを詰め、その背中を蹴り飛ばしたのであった。


「ったく……あ?」


一発で伸した男の背中を踏みつけたまま、美形が俺を見る。
地面に膝をつけたままの俺はアホ面でもかましているだろう。つーかなに、俺、どうすりゃいいの。


「……アンタ、これの仲間?」

「え? ……いや、知らない人だけど」

「だよね」


確認のつもりだったのだろうか。ため息をついた美形が男の頭を蹴ってから俺のほうに近寄る。スッと差し出された手にはたくさんの指輪がついていた。


「立って。送る」

「……え?」

「俺のせいで迷惑かけたから、送る」

「……」


なんとまぁ、律儀な。俺なんて見てない振りしてさっさと帰ろうとしてたのに。
迷いながらも手を取れば、一瞬で体が浮いた。
立ち上がった俺の体を、美形がパンパンと埃を払う。見た目に反して優しい性格に目がただ丸くなっていた。




 


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