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それから頼んでいたコーヒーが来てもこんな調子で、俺が聞けば大抵のことは答えてくれるし、言い淀んでいれば煽って発言させてくる。
なんだかんだいって、ちゃんと兄貴面かましてる辺りが正直嬉しいけど、歯がゆい。

なんでもっと前からそうしてくれなかったんだって、女々しいことすら思ってしまう。


「あ? う、わ……玲央じゃん」

「あぁ? んだてめぇ」


喫茶店から出て今度こそ帰るのかと駅前を歩いているとき、兄貴の肩に誰かがぶつかってきた。
うしろ向きで誰かと話をしながら歩いていたせいで、兄貴が見えなかったのだろう。しかし相手が分かった瞬間、男の顔は見事に歪んだ。
しかしすぐさま笑みを張り付けると、恐怖から無理に出しているような声で兄貴に言ったのである。


「てめぇこそなに昼間っからうろついてんだよ」

「……」


その発言に「あちゃー」なんて感情が俺の表情を生成する。あの男、死んだな。
兄貴の足が微かに動いたかと思えば、一瞬の間にそれが男の腹を蹴り飛ばしていた。


「誰に喧嘩売ってんだよ、てめぇ」


サァーと顔を青ざめているのは俺だけではない、周りの通行人全員だ。駅前とあって人も多いこの場所で、巻き込まれたくないNO,1を誇る喧嘩がはじまったのである。無理もない。
少しうしろに後ずされば、通行人だろう人間にぶつかってしまう。あぁもう、すみません。振り返った瞬間――。


――ガッ!

「……え」


なぜか、殴られた。
痛いといえば痛いのだが、正直驚きのほうが隠せない。
目の前の男は嫌らしい笑みで俺を見ている。あぁ、そうか。こいつら――。


「なぁ玲央、アンタさぁ、少しやりすぎなんじゃねぇの?」


兄貴と俺が歩いているのを見て、人質に取れると思ったのだろう。だから無謀な喧嘩を売ってきているのだろう。
両腕を取られて捕えられるが、俺と男を見る兄貴の表情はいたって普通だった。むしろ、つまらないものでも見ているような顔だ。




 


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