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ギギギと首を鳴らして兄貴のほうへ顔を向ける。やつは店の外で電話をしていたが、通行人が全員避けるように早足になっている。
ふたたびギャル男のほうへ顔を戻した。


「しゃーないわな。あんなイケメン、そりゃスカウトかかんねーほうがおかしいもん」

「……あー……えーと……なんか、その」

「ん?」

「だから、まぁ……ありがとうございます」


なぜ自分でもお礼を言ったのか分からない。
モデルをやっているという事実を教えてくれたから? 不可抗力だろうが。
イケメンって褒めてくれたから? 弟から見ても腰抜かすくらいにイケメンだがな。

そんな俺と同じ気持ちだったのか、ギャル男は驚いた顔をこちらに向けていた。


「やっぱ似てねぇー」

「……俺もそう思います」


なんだかもう、どうにでもなれ。

それからギャル男のチョイスでほいほい決まった服を試着しては「やっぱパンツ変えるべ」とか「ジャケットこっちにして」とか、まぁ散々だった。疲れた、という意味でだが。
それでもプロ意識なのだろう、ギャル男は自分や兄貴とは違ったジャンルのもので見立ててくれた。

例えば、ヴィンテージデニムジャケット・Uネック長袖カットソー・カーゴパンツ・レースアップブーツ、なんてコーディネートとか。
「上はジップパーカーにするだけでラフになるよ〜」とかアドバイスを受けつつも、ちゃっかりパーカーを俺の手に投げるあたりは違う意味でプロ意識を感じたが。

そうして両手では抱えきれなくなった服をレジに置けば、どこかへ消えていた兄貴がやってきた。


「どうよ、ざっとこんなもんじゃん?」

「あぁ」


レジカウンターから落ちそうなほど大量の服をどこか自慢げに見せるギャル男をよそに、兄貴はさっさと諭吉を数枚取り出す。
ギョッとしながら固まっていれば、ギャル男は楽しそうに笑って、兄貴は反応すらしてくれなかった。

本当に買ってくれるとは……なんかもう、胸がいっぱいです。




 


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