「いらっしゃいませ〜。で、玲央。この子に合う服見立てればいーわけ?」
「あぁ」
呆然と立ち尽くす俺に寄って来たギャル男みたいな男が、面倒くさそうに俺を見る兄貴に話しかける。
その内容にいまいち頭がついていかないが、ギャル男が手を引っ張って奥へ連れて行くので、俺はなにも言えずにされるがままだった。
あのー、とか声をかけたりもしたが、ギャル男は俺と店に並ぶ服を交互に見たかと思えば、選んだ服を俺に持たせる。どうしよう、ついていけない。
「弟なんだって?」
「え?」
「アンタ、玲央の弟なんだろ?」
なのに突然話しかけてくるから、どこかへ飛んでいた自分が急いで戻ってきた。
「あ、あぁ……はい、そうです」
「ふーん。似てないね」
「よく、言われます」
「あははっ、ほんっと、似てねー」
畳まれていたVネックカットソーを広げながらギャル男が笑う。黒い肌に白い歯が異様に目立っていた。
「でも玲央と兄弟とか、マジ大変っしょ?」
「まぁ、そうですね……でも、意外と最近は楽しいです」
「あっは、なにそれ。じゃあ前は楽しくなかったんだ?」
「色々あったんです……」
「へー、ふーん? そうなんだぁ?」
ニヤニヤ。あまり好きにはなれない笑みを浮かべたギャル男が、持っていたVネックカットソーを俺に投げつける。
カゴとかねーのか、バカヤロー。
「ま、でも仲は良さそうじゃん。玲央がこの店に人連れてくんなんて、隆二しか見たことねーもん」
「あ……やっぱり隆二さんもこの店で買ってるんですね」
「買ってるっつーか、まぁ、買ってっけど。あの二人、モデルやってるからねー」
「………………は?」
「え、なに? 知らなかったん? あは、ごめんね?」
……はい?
← →
しおりを挟む /
戻る