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じっと、小皿の中で湯気を立てるお粥を眺めている彼女。
しばらくそのままでいたかと思えば、遠慮がちに俺の方へ視線を向けた。


「召し上がれ?」


優しく笑ってあげれば、彼女はおずおずとスプーンを握り、頼りない動きでお粥をすくう。
ふー、ふー、と息を吹きかけ、意を決したように口に運んだ。


「……」

「……」


なにを言うでもなく、なんどか口を動かした彼女は覇気のない顔でお粥を見つめていた。


「飲み物、いるだろ?」

「え?」


口に合わなかったのだろうかと心配していれば、状況を呑み込めただろう仁さんがスポーツドリンクらしきものが入ったグラスをお粥の隣に置いた。
彼女ではないが驚いた俺が仁さんを見上げれば、彼はニッと微笑みわしゃわしゃと俺の頭を撫でてきた。
後ろのほうで内山が「浮気よアナター!」とか言っていたが、「あー、はいはい」なんてすぐに仁さんが構いに行く。


「なんなんだ……って、あぁ、ごめん。うるさいよね?」

「……」


二人のアホな、主に内山に呆れつつ彼女に苦笑を浮かべれば、首を横に振り、再びお粥を口に運んだ。
その姿にとりあえず安堵して、無言で食べ続ける彼女の側にいることにする。

しばらくして、すべて平らげた彼女がグラスを握りながら、俯いたまま口を開く。


「やっぱり……苦手かも、」

「え?」


突然、そう口にした彼女に驚いて間抜けな声が出てしまった。
彼女はそんな俺に視線を向けると、いくぶんかすっきりとした顔で微笑んだ。


「あぁいうの、本当は苦手なのかも……」

「……」

「ちょっと、意固地になってたの……でも、ダメみたい。お酒、苦手かも」

「……うん」


下手な笑みを浮かべ、彼女は笑う。
悔しそうにグラスを握る手が震えていた。


「本当、私って向いてないなぁ……」


自己嫌悪しているだろう彼女が困ったように笑った。


「……別にいいんじゃない? 夜遊びなんてできなくても、面白い人生送れるよ」

「え?」

「酒とか、煙草とかも。別にやりたいならやればいいし、苦手なら苦手でいいと思う。それが個性だと思うし」

「……」


自分でも悲しいことに、当たり障りのないことしか言えなかった。
それでも彼女は満足げに、柔らかな笑みを浮かべて頷いた。




 


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