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8 - 1



結果から言おう、雄樹は赤点だった。しかも全教科、である。
しかし俺と雄樹が必死に「寝てなかったら赤点じゃなかった」なんて説得したことにより、仁さんの怒りはなんとか鎮めることができた。
が、だからといって甘い話などあるはずもなく、雄樹は罰として当分、閉店後の掃除を一人でやることになった。憐れ雄樹、自業自得だ。
あとから聞けば、テスト前日になって緊張したらしい。いつもは緊張すらしない雄樹が、だ。それくらいバイトが好きなんだと思えば、なんだか教えた身としても少しは心が晴れるというか……。

とにかく、だ。
遊園地の入場券は貰えなかった。雄樹はなんとかバイトをつづけられている。それが結果である。


「……本当に、行くわけ?」

「約束しただろうが。行かねぇなら行かねぇでハッキリしろ」

「いっ、くに……決まってるだろうが」


そしてテストが帰ってきた週の土曜日、俺は約束通り兄貴と出かけることになった。
服を買ってやる。とか言われたが、正直兄貴と出かけられるのなら理由なんてなんだっていい。

ただ、問題なのは。

兄貴と出かけることが、こんなに恥ずかしくて堪らない、ということである。
だって、そうだろ。今まで家でしかろくに話もしてねぇし、デスリカとかカシストとか、体育祭のときだってまともな会話も交えていない。

それなのに「はいじゃあ出かけましょう」なんて、そんなの嬉しいとか混ざり合いすぎて恥ずかしいにもほどがある。

だけどYESかNOしかない兄貴の怒りを高めてしまう前に、俺はそんなやつの背中を追いかけた。
ご自慢のバイクに跨いだときには心臓が破裂しそうだったし、ご近所さんが目を丸くしてこちらを見ていたときは挨拶もぎこちなかった。

でもそれ以上に感じてしまうのは、本当に俺は今、兄貴と出かけようとしているんだってこと。
あぁ、良かった。今日が晴れてて良かった。ありがとう、天気予報のお姉さん。明日からもまた見ます。




 


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