「……」
「……」
「……」
「おい、いい加減にしろ」
「……う」
だって、絶対馬鹿にする。別に馬鹿にされるのはいい。散々虐げられてきたんだ、それくらいまだ可愛いものだ。でも、言えない理由はそこじゃない。
「俺に、だって、プライドあるんだからな」
「なんの話だよ。意味分かんねぇ」
「だからっ、全部食べるからいいじゃんかっ」
「それを決めんのは世話してやってる俺だ。だから言え」
「……」
あぁ、どうしてこう、神様は俺に優しくないのだろうか。
もっと俺に優しくてもいいと思うんだ。なぁ、神様?
「……だって、雄樹が」
「雄樹?」
「雄樹が、テストんとき……寝るから……言って起こさせたけど、船こいでたし」
「全然分かんねぇ」
くそっ、もうこうなりゃどうとでもなれ!
「だから、雄樹が赤点取れば兄貴と遊園地行けないじゃんっ! アイツ今日のテストでずっと寝ぼけてたし、もうそれ、入場券貰えないだろ!? だから、だから……なんか悔しくて、それで料理、作りました」
「……はぁ?」
言っているうちに惨めになって、最後のほうは体を縮めた。
隣に座る兄貴がどんな表情をしているとか、もうそんなんどうでもいい。とにかく穴があったら埋まって潜りたい。
「そんなに俺と遊園地行きてぇのか、てめぇは」
「……そっ、りゃ……そうです、けど?」
なのに返してきた言葉の論点が妙にズレていて、やけに上ずった声が出てしまう。
微かに笑った声が兄貴のほうからしたが、やはりまだ、そちらを見る気にはなれなかった。
「なぁ、じゃあなんでタマネギばっかなんだよ、あれ」
「――……え゛?」
あぁ、なんでだろう。なんでこういうときに限ってそこに気づくんですか、お兄さま。
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