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なんでだ、なんで分かんないんだコイツは。
やばい、俺のほうがおかしくなりそうだ……。
あーあー、雄樹のレベルに合わせるんだ、そう、俺、落ち着け。


「なんでカッコで閉じるの〜?」

「それは……そう、そうなんだよ雄樹、実はだな。この2(a×3)の2はお姫様なんだ」

「…………はい?」


なんだろう、惨めな気分になってきたぞ。


「んでカッコの中はお姫様を狙う悪党で、雄樹、お前はそのお姫様を悪党から守るためにカッコで悪党を閉じ込めるんだよ」

「……」


ゲーム好きの雄樹に合わせて妙な教えを説いてみるも、どうしてだろう、こんなに切ない気持ちになるのは。
わなわな震える雄樹を見ながら「あ、これ無理だわ」なんて悟るも数秒後、やつはバッと顔を上げ、


「つまり俺は騎士なんだねっ!」

「……は?」


とか、なんか叫んじゃったんですけど。

って俺、そうじゃあない。今だ。今がチャンスだ。


「そう! お前は騎士……うん、まぁ騎士なんだよ! だからお姫様を悪党から守らなきゃなんねぇんだよ!」

「つまりお姫様奪還の方式! なんだね!?」

「だっ……あぁ、うん! そうだ!」


なに言ってんだ俺。つーか奪還ってなんだよ。そしてなんでその理解で問題が解けちゃうんですかアホ山アホ樹くん。
どうしよう、こいつの頭の中を一度でいいから見てみたい。

などと思う俺をよそに、雄樹は教科書と睨めっこをしたと思えば「お姫様救出の方式!」とか「悪党排除の方式!」とかなんとか叫んでは、信じられないほどスラスラ問題を解いていた。
俺からしてみれば「お姫様奪還」も「お姫様救出」も「悪党排除」も結局は同じもんだと思うのだが、アホの脳内ではきちんと区別されているのだろう。アホだな。

そして信じられないことに、雄樹はそのままテスト範囲の問題を全て理解しやがったのである。えぇー……。




 


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