「仁さんが遊園地の入場券くれるんだよ。だからさ、それ、兄貴にあげる」
「……はぁ?」
あぁ、なんだ。俺ってば閃いたぜ。
自分で使う当てがないのなら、女にモテモテの兄貴にあげればいいのだ。そのほうが有効的じゃんか。
「それで泉ちゃんとデートでもしてきなよ。一応彼女なんだろ?」
「形だけだ。遊びに連れてく義理はねぇよ」
「じゃあ違う子でもいいからさ、連れてってあげればいいじゃん」
「なんで俺が女のためにわざわざ遊園地に行かなきゃなんねぇんだよ」
「……え……」
どうしよう。自分の兄とはいえ、コイツ最低だな。
受け取る気配が感じられないので、また違う話題を振ろうと考える。が、なぜか雄樹のアホ面しか浮かばない。俺の日常はアホの世話しかないのか?
「てめぇが使えばいいだろ」
「え? ……あぁ、いや、はじめは雄樹と行こうかなって思ったんだけど、でもそれじゃあなんか癪だし。つーか俺、一緒に行くような人、他にいねぇし」
「……寂しいやつだな、お前」
「うっ、うるせー」
お前と違ってこちとら非モテなんじゃい。ダチだって雄樹しかいねーし。あぁ、なんか切なくなってきた。友達作ろうかな……。
「連れてってやろうか?」
「は?」
明らかに幻聴だろうがそうではない発言に、顔が思いっきり歪んだ。
確かに一緒に出かけることは夢だったけど、なんつーか現実に言われてみれば……とてつもなく胡散臭い。
「なに、どうしたの突然……変」
「言うようになったじゃねぇか」
「いや、だって女の子のために動かない兄貴が一緒に行こうかって、すげー胡散臭いもん」
「へぇ?」
どこかニヤニヤとした、あくどい笑みを浮かべる兄貴がこのときばかりはキモかった。
なんというか、信じた瞬間に頭から食いちぎられそう。
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