そのあと遅刻して学校に行けば、調理室に入るなり雄樹にタックルされるわ、ゲーム攻略ができないとか泣きつかれるわ、おまけに寂しいよぅとかすり寄るわで、正直ウザかったのだがまぁ、癒された。
やっぱりアホな雄樹がいるだけで全部が嘘みたいにギャグになる。
「は?」
だけどいつものようにサボっているとき、俺は言った。
兄貴……玲央となんか、仲良くなったかもって。
そしたら雄樹は目を丸めて、なにか言いたそうな顔を複雑に歪ませる。ついでに両手をパタパタと振り始めた。挙動不審にもほどがあるぞ。
「あ、えーと、えーと、あれだ! だから、だからあれだよ! あれ!」
「あれってなんだよ」
「だから! そう、あれ!」
かと思えばパッと笑顔を作って、俺に抱き着いた。
「おめでとうっ!」
「……は」
おめでとう。そう言われて、口から変な息が漏れてしまった。
だけど俺の口元は緩んでしまって、なんだか雄樹がいつも以上に可愛く見えて、背中に回る腕と同じように雄樹を抱きしめた。
「……うん、ありがと」
「いいんだよ! だって俺っ! トラちゃんのダチだもんっ!」
「あぁ……そうだよな。うん、雄樹はダチだ。最高の、俺のダチだ」
「うんっ!」
ぎゅうー、なんて音がする。
正直苦しいが、そんなのお構いなしといった様子で、俺と雄樹の腕は互いの体を必死に抱きしめていた。
あぁ、これが友情か……やばい、嬉しい。
バッ! と雄樹が俺の肩から顔を上げ、思いのほか真剣な顔を向けた。次の瞬間――、
「だから勉強教えて!」
「は?」
なんだかとても、いや、かなり空気の流れを無視した言葉がぶっ飛んできた。
まぬけな表情で雄樹を見るが、やつは今か今かと俺の返事を待っているようだ。
うん、とりあえず。
「お前はアホだな、やっぱり」
「だから勉強教えてよー!」
うわーん! なんていつもの雄樹が、今の俺には嬉しくてしようがなかった。
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